「キャンピングカーって、本当にいいもんだよ」
2006年に出版した、拙著のタイトルである。
キャンピングカーの仕事をするようになって早20年。今もこの一言が、私の原点だ。
だが、この言葉を口にすると、返ってくるのはたいてい、次の3つだ。
「そんな高いもの、無理」
「そんな大きな車、無理」
「買ったところで、そんなに使わない(のでは?)」
私はよく講演などで「高い」「デカイ」「使わない」と称してこの話をしている。
今回はこの中の「高い」に注目してみたい。
■キャンピングカーって、そんな高いもの…?
卵が1パック300円になろうかという高騰ぶりだ。えらいことである。
卵好きのカミさんはスーパーに行くたびに、涙目で売り場をにらんでいる。
何もかもが値上げ値上げの、インフレ状態。
当然キャンピングカーも、さまざまな要因で値上がりしている。
かつては「高い!」と言われるたびに、
「じゃあ、いくらぐらいすると思ってます?」と聞き返していた。
「1千万円以上するんでしょ?」
いやいやいや、そんなにはしませんよ、と笑って否定したものだ。
が。最近これがちょっと笑えなくなってきている。
国産キャブコンでも1千万円越えの商品が増えてきているのだ。
輸入車なら、2千万円台や3千万円台なんていう高級車もある。
では、最近のキャンピングカーはいくらぐらいなのか。
お手頃価格を掲げた商品、高級感を売りにした商品と百花繚乱だが、
ショー会場などを取材した私の感覚で、各クラスの中心価格帯を紹介するなら
バンコンで600万円台(かつては500万円台だった)
キャブコンは800万円台(かつては700万円台だった)
軽キャンピングカーは200万円台(かつては150万円だった)
あたりだろうと思っている。
さて。これを高いとみるか。安いとみるか。
人気のミニバン(乗用車)を例に、ちょっと考えてみて欲しい。
トヨタ・アルファードや日産・エルグランドの金額を見てみよう。4WDだ、ハイブリッドだ…なんてやっていると、すぐに600万円オーバーだ。あれこれオプションをつけたらあっという間に700万円。ちょっとしたバンコンぐらいの価格になってしまう。
では価格的に同等だとして、キャンピングカーにできて・大型ワゴンにはできないこと、といったら、一体何だろう?
・手足を伸ばしてのびのびと寝られるベッドがあること
・お茶を淹れたり、手を洗ったり、場合によっては調理もできること
・断熱がしっかりしていて、冷暖房を切っても、しばらくは快適な温度が保てること
・エンジンを切った状態でも冷暖房が使えること
・トイレがあれば、夜間でも悪天候でも安心して過ごせること
車によって装備の違いはあるが、おおよそこんなところだろうか。
逆にキャンピングカーに「できないこと」と言ったら?
「いかにも商用車然としたルックスで価格相応の高級車らしい佇まいが得られない」こと、ぐらいではなかろうか。
■最大240回払いも可能??
高額な買い物だけに、ローンを組む人は多い。が、キャンピングカーのローンは通常のオートローンとは少し事情が違う。
通常のオートローンなら、多くても60回払い(5年)がいいところだろう。が、キャンピングカーのローンは最大で240回、実に20年の分割が可能だ。
なぜそんなことが可能なのか。それは「古くなっても(中古になっても)価値が下がらない」という、キャンピングカーの特性によるものだ。
乗用車の場合、1000万円超の高級車を新車で買っても、5年も乗れば下取り価格は半分以下だろう。しかしキャンピングカーは3年乗っても5年乗っても、乗用車ほどの値崩れはしない。
なぜか。
単純に「人気だから」というだけではない。「最新型であること」が大事な乗用車と違って、大きさや使い勝手の善し悪し(=キャンピングカーとしての人気度)の方が重要視されるからだ。
もちろん、きれいに使ってあること、状態がいいこと、事故歴がないことなど、ポイントはいくつかあるが、乗用車に比べるとリセールバリューが大きいことに違いはない。
中古になっても価値が下がらないキャンピングカーは、ローン会社の信用度も高い、ということなのだ。だからこそ、多回数ローンが可能なのである。
そのおかげで、キャンピングカーの『乗り換え』のハードルも低い。
「子どもが大きくなって、手狭になった」→大きい車に乗り換えたい
「子どもが大きくなって、一緒に来なくなった」→小さい車に乗り換えたい
「大型犬を飼うことにした」→ペットに優しい車に乗り換えたい
ベテランオーナーほど気軽に乗り換えに踏み切る傾向にあるのは、リセールバリューの大きさを知っているからこそ、ともいえる。
もちろん「安い」買い物だとは言わない。
だが、お金を払うだけの「価値」はあると信じている。
乱暴を承知で言えば、買ってみてどうしても合わなかったら、さっさと売却すれば、損は少ない。
どんなものでもそうだと思うが、
・心から楽しいと思えて
・存分に活用できて
・人生が豊かになる
・いざというとき(防災の面で)役に立つ
人生、そんなものに出会えること自体が幸せなことだし、
そこにはお金に換算できない価値があると思う。
もちろん、自分に合わない商品をうっかり買ってしまったら、楽しめはしないだろう。
「なんだか使いにくい・不便」
「面白くない」
「面倒くさい」
と、がっかりするハメになる。
キャンピングカーなら何を買ってもいい、というわけではない。それはどんな買い物だって同じである。
大金をはたいたのに「失敗した…」と思うなら、それは「高い買い物」だろう。
だからこそ、自分にはどんな商品が合っているのか。どんな使い方が合っているのか。
正しい情報にふれて、確かめて、さまざまな使い方・遊び方を研究してみよう。視野を広く、頭を柔軟に。そのうえで、じっくり検討してほしいのだ。
キャンピングカーを「高い買い物」にしないためにも。